余白は「文字1個分」で決める。WordとCanvaでつくるZINEの版面・余白の計算方法

余白は「文字1個分」で決める。WordとCanvaでつくるZINEの版面・余白の計算方法

平田提

ZINEをつくっていると、必ずぶつかるのが「余白、どのくらいとればいいの?」という問題です。とりあえず上下左右10mmにしてみたものの、刷り上がりを見るとなんだか窮屈だったり、綴じ側(ノド)の文字が読みにくかったり。

私が読んで「なるほど」と思ったのが、ブックデザイナーの松田行正さんの『はじめてのレイアウト』(誠文堂新光社)で紹介されている、余白を本文の文字サイズから計算する考え方です。この記事では、その考え方を参考にしながら、Adobe製品ではなくWordやCanvaでZINEをつくる人向けに、pt(ポイント)でも計算できる形に整理してみました。A5・B6で、縦書きの読みものと横書きの雑誌風レイアウトの作例、版面・余白設定ツールのリンクもつけています。ぜひ活用してみてください!


余白を感覚で決めるとズレがち

余白を「上下左右10mm」のように先に決めてしまうと、そのあとに入れる文字の大きさや行数とは無関係に余白が決まってしまいます。すると、最後の行のあとに中途半端なすき間ができたり、ノド側の余白が小口(外側)より狭くなったりと、どこかで辻褄が合わなくなります。

そこで順番を逆にします。先に「本文の文字サイズ」と「1ページに入れる文字量」を決めて、文字が入る範囲(版面)を計算する。余白はその残り、または「文字何個分か」で決める。こうすると、余白と文字のあいだに根拠のある関係が生まれ、ページ全体が整って見えます。

・関連記事:本の部位名称(天地・小口・ノド・版面)と余白の取り方ガイド


物差しは「本文の文字1個分」

この方法では、本文の文字1個分の大きさを「1W(Wordの「W」)」と呼び、余白を「4W」「5W」のように文字の個数で指定します。10ptの文字なら、4Wは10pt×4=40pt分の余白です。

文字サイズの単位は、印刷業界ではQ(級)、WordやCanvaではpt(ポイント)がよく使われます。それぞれの関係は次のとおりです。

1Q  = 0.25mm
1pt = 約0.3528mm(25.4mm ÷ 72)
mm  = pt × 0.3528
Q   = mm × 4
pt  = Q × 約0.7087

よく使うサイズの対応表です。最近の雑誌の本文は12Q前後が多く、ptでいうと8.5ptがほぼ同じ大きさになります。標準的な文字の大きさでいうと13Q、より広い年齢層が読みやすいことを考えると14Q程度が適当かもしれません。

pt mm(1W) Q換算
8pt 2.822mm 約11.3Q
8.5pt 2.999mm 約12Q
9pt 3.175mm 約12.7Q
9.5pt 3.351mm 約13.4Q
10pt 3.528mm 約14.1Q
10.5pt 3.704mm 約14.8Q


余白を決める3つのヒント

余白を決めるのに3つヒントとなる情報があります。

1つ目は、4辺のうち2辺だけを「文字何個分」で指定し、残りの2辺は計算の結果に任せること。たとえば天(上)と小口(外側)を指定し、地(下)とノド(綴じ側)を残りとして算出する。すべての辺を指定しようとすると、版面の端数を吸収する場所がなくなってしまうからです。

2つ目は、計算した結果、ノドが小口より広くなっているかを必ず確認することです。ページを開くと綴じ側は紙が湾曲して見えにくくなるので、ノドは小口より広めにとるのが基本です。ノドが狭くなってしまったら、行数を1行減らすなどして調整します。

3つ目は、天と地のバランスです。天より地を広くとると、文字の塊が上に寄って見え、引き締まった印象になります。地より天が広いと、ふわっと下に落ちた印象になります。読みものなら「天:地=1:1.5〜2」くらいを目安にすると落ち着きます。

あわせて、文字組みの目安も押さえておきましょう。行間(行と行のすき間)は文字サイズの75%前後が読みやすい標準です。1行の字数は、書籍なら40字前後、雑誌のように段を組む場合は15〜20字程度が目安になります。


計算式

ここでは、文字と文字のすき間をあけない「ベタ組み」を前提にしています。行送りとは、ある行の文字の中心から、次の行の文字の中心までの距離のことで、「文字サイズ+行間」で求められます。

縦書きの場合は、1行の字数でページの縦方向が、行数で横方向が決まります。

版面の縦 = 1W × 1行の字数
版面の横 = (行数 × 行送り − 行間)× 0.3528     ※ptの場合
天       = 1W × 天の文字数
地       = 仕上がりの縦 − 版面の縦 − 天
小口     = 1W × 小口の文字数
ノド     = 仕上がりの横 − 版面の横 − 小口

横書きの場合は、縦と横が入れ替わります。


版面の横 = 1W × 1行の字数
版面の縦 = (行数 × 行送り − 行間)× 0.3528     ※ptの場合

版面の行方向の長さで「行間」を1つ引くのは、最後の行のうしろには行間が存在しないためです。ここを忘れると、実際の版面より行間1つ分だけ大きく計算してしまいます。

段組みにする場合は、1行の字数の部分を「1段の字数 × 段数 + 段間の文字数 ×(段数 − 1)」に置き換えます。

・関連記事:A5サイズは何mm? ZINEでよく使うサイズ一覧と選び方【mm早見表つき】


作例1 読みもの(縦書き・B6・1段)

エッセイや小説など、じっくり読んでもらうZINEの例です。本文はやや小さめの9pt(約12.7Q)にしました。

項目 設定
仕上がり B6(128×182mm)
本文 9pt(1W=3.175mm)
行送り 16pt(行間7pt、約78%)
字数・行数 42字×17行=714字/ページ
版面 縦133.35mm×横93.49mm
天 5W=15.875mm
地 32.775mm(成り行き)
小口 4W=12.7mm
ノド 21.81mm(成り行き)

計算の流れはこうです。版面の縦は3.175mm×42字=133.35mm。版面の横は(17行×16pt−7pt)=265pt、265×0.3528で約93.49mm。天は5文字分で15.875mm、地は182−133.35−15.875=32.775mm。小口は4文字分で12.7mm、ノドは128−93.49−12.7=約21.81mmです。

ノド(21.81mm)が小口(12.7mm)より広く、天:地もおよそ1:2なので、落ち着いた読みものらしい版面になります。行数を18行に増やすとノドが約16.17mmまで狭まるので、ページ数に余裕があるなら17行がおすすめです。



作例2 読みもの(縦書き・A5・2段)

A5の縦書きで1段にすると1行が50字を超えて読みにくくなるので、文芸誌のように2段に分けた例です。

項目 設定
仕上がり A5(148×210mm)
本文 9pt(1W=3.175mm)
行送り 16pt(行間7pt、約78%)
字数・行数 25字×2段×21行=1,050字/ページ
段間 4W=12.7mm
版面 縦171.45mm×横116.06mm
天 4W=12.7mm
地 25.85mm(成り行き)
小口 4W=12.7mm
ノド 19.24mm(成り行き)

版面の縦は、25字×2段に段間4文字分を足した54文字分で、3.175×54=171.45mm。版面の横は(21行×16pt−7pt)=329pt、約116.06mmです。

段組みにすると、余白と段間をすべて同じ「4W」でそろえられるので、ページに統一感が出ます。



作例3 雑誌っぽいレイアウト(横書き・A5・2段)

写真やイラストと一緒に、情報を軽快に読ませる雑誌風の例です。本文は最近の雑誌に多い12Qに合わせて、8.5ptにしました。

雑誌型のレイアウトでは、先に余白を文字数で決め、そこに入る字数を割り出す流れが便利です。この作例では、天と小口を文字数で指定し、1段の字数を決めたうえで、ノドと地を成り行きにしています。

項目 設定
仕上がり A5(148×210mm)
本文 8.5pt(1W=約2.999mm)
行送り 15pt(行間6.5pt、約76%)
字数・行数 18字×2段×34行=1,224字/ページ
段間 2W=約6.0mm
1段の幅 18W=約53.98mm
版面 横113.95mm×縦177.62mm
天 4W=約11.99mm
地 20.38mm(成り行き)
小口 5W=約14.99mm
ノド 19.06mm(成り行き)

版面の横は、18字×2段+段間2文字分=38文字分で、約113.95mm。版面の縦は(34行×15pt−6.5pt)=503.5pt、約177.62mmです。

地には20mm程度の余裕があるので、ノンブル(ページ番号)やフッターの情報を置くスペースとしても使えます。雑誌らしく見せたいときは、段間を2Wと狭めにして、写真を段幅(または2段分の幅)にそろえて配置すると、整った印象になります。



作例4 雑誌っぽいレイアウト(横書き・B6・2段)

B6サイズの小さめの雑誌風ZINEの例です。判型が小さくなる分、1段の字数を15字に減らしています。

項目 設定
仕上がり B6(128×182mm)
本文 8.5pt(1W=約2.999mm)
行送り 15pt(行間6.5pt、約76%)
字数・行数 15字×2段×29行=870字/ページ
段間 2W=約6.0mm
1段の幅 15W=約44.98mm
版面 横95.96mm×縦151.17mm
天 4W=約11.99mm
地 18.84mm(成り行き)
小口 4W=約11.99mm
ノド 20.05mm(成り行き)

版面の横は、15字×2段+段間2文字分=32文字分で約95.96mm。版面の縦は(29行×15pt−6.5pt)=428.5pt、約151.17mmです。


なお、8.5ptは約2.999mmなので、12Q(3mm)とほぼ同じですが厳密には少しだけ小さくなります。Q数で組む場合は、1W=3mmとして計算し直してください。

版面・余白計算ツール


Wordで設定するときのコツ

Wordでは「レイアウト」→「ページ設定」から、ここまでの数値をほぼそのまま入力できます。

まず「用紙」タブで仕上がりサイズを指定し、「余白」タブで天・地・ノド・小口の値を入れます。見開きで左右の余白を入れ替えたい場合は、「印刷の形式」を「見開きページ」にすると、内側(ノド)と外側(小口)で指定できます。余白の単位がmmになっていない場合は、オプションの詳細設定で単位を変更しておきましょう。

次に「文字数と行数」タブで「文字数と行数を指定する」を選び、字数と行数を入力します。このとき表示される「字送り」が文字サイズと同じ値、「行送り」が計算で使った値になっていれば、設計どおりに組めています。縦書きにする場合は同じタブで「縦書き」を、2段にする場合は「段数」を指定します。

※MacのPagesではWordと文字数✕行数の概念が違うため思い通りに設定されない場合がありますが、ツールからダウンロードしたドキュメントファイルを開くと、ある程度は近い余白が設定されていると思います。


Canvaで設定するときのコツ

Canvaでは、カスタムサイズの単位をmmにして仕上がりサイズでデザインをつくります。

テキストボックスの幅(縦書きなら高さ)を「1W×1行の字数」に合わせ、文字間隔は0にしておくと、1行の字数を固定できます。行間隔は倍率で指定するので、「行送り÷文字サイズ」で求めます。作例1・2なら16÷9で約1.78、作例3・4なら15÷8.5で約1.76です。縦書きは、テキストボックスを選んで「縦書きのテキスト」ボタンで切り替えられます。

ただ、Canvaの文字サイズの数値が実際の印刷で何mmになるかは、使うフォントや設定によって見え方が変わることがあります。本番の前に、10文字だけの行を試し刷りして、長さが「1W×10」になっているか定規で測っておくと安心です。

余白の位置は、版面の枠を細い線や半透明の四角で描いておき、完成したら非表示にする方法が手軽です。

ツールでダウンロードしたPDFをデザインとしてアップロードすることで余白とサイズを引き継いで制作することもできます。


まとめ

余白は「なんとなく」ではなく、本文の文字1個分を物差しにして決める。文字サイズと文字量から版面を計算し、余白を文字の倍数で指定して、残りを成り行きにする。最後にノドが小口より広いかを確認する。この順番を守るだけで、ZINEの誌面はぐっと整って見えます。

DIY BOOKSでは、この計算を自動でできるツールを作成しています。文字サイズ(pt/Q)、判型、字数、行数を入れるだけで、版面と余白が分かるようにしています。ぜひご確認ください!

版面・余白計算ツール

※こちらのツールのご利用については恐れ入りますが自己責任でお願いいたします。WordやCanvaの利用方法等についてはお問い合わせを受けつけておりません。ご了承ください。


参考文献

松田行正『はじめてのレイアウト マネするだけでエディトリアルデザインが上手くなる』誠文堂新光社

文字サイズと余白の関係、行間や行長の目安、雑誌の段組みフォーマットのつくり方など、エディトリアルデザインの基本が作例とともに丁寧に解説されています。この記事で紹介した考え方をさらに深めたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

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DIY BOOKS店主(編集者・ライター)
平田提

DIY BOOKS店主、編集者・文筆家。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセ等を経て2021年に株式会社TOGLを設立。2023年10月より尼崎市・武庫元町で「つくれる本屋」DIY BOOKSを開店。今まで5,000冊ほどリソグラフで刷って手製本してきました。ZINEを2013年ぐらいからつくっています。