大阪gamoyon Art laboに聞く。軽やかにZINEをつくる人が増えてほしい

大阪gamoyon Art laboに聞く。軽やかにZINEをつくる人が増えてほしい

平田提

リソグラフやシルクスクリーンが使える、大阪・蒲生四丁目のgamoyon Art labo(ガモヨンアートラボ)。ZINEづくりやポストカードなどを気軽に制作できるスタジオです。
今回、スタッフの平田想(こころ)さん にお話を伺いました。 紙の卸業を母体とする「ものづくりができる紙屋さん」のスタッフでありながら、ご自身もZINEをつくり続けています 。 そんな想さんに、お店についてやZINEづくりの楽しみ方までお聞きしました。
※聞き手と同じ苗字なので以降、お名前で。

https://gamolabo.com/


「ものづくりができる紙屋さん」gamoyon Art laboの始まり

―― 改めてgamoyon Art laboがどういう場所なのか教えていただけますか?

一言で言うと「ものづくりができる紙屋さん」です 。母体は東信洋紙という、今の代表で3代目になる紙の卸業の会社です 。昔の蒲生4丁目周辺は町工場が多いエリアだったこともあり、紙の容器をつくる「紙器(しき)屋さん」向けに、ボール紙(板紙)を卸していました。gamoyon Art laboはその会社が3年前に始めた新しい事業で、今年で4年目になります 。

―― なぜ現在のようにリソグラフを使える、リソスタジオのような形式になったんでしょうか。

私はオープニングスタッフのようなタイミングで入ったのですが、それまではリソグラフのこともよく知りませんでした 。そこから独学やワークショップ、スタジオ見学などで勉強して、今のサービスに繋がっています 。

―― 今はリソグラフの利用者が一番多いんですか?

リソグラフをご利用いただくことは増えましたが同じくらいシルクスクリーンを利用される方もいますし、印刷せず「紙だけ欲しい」という方もいらっしゃるんです 。ZINEをいきなりつくるのはハードルが高いから、まずはポストカードやポスターなどノベルティやグッズをつくるという方もおられます。紙は色のバリエーションや厚み(斤量)含めて約400種類置いていて、いわゆるファンシーペーパーと呼ばれる紙をA3サイズ1枚単位で販売しています 。

―― 人気の紙や、リソのインク色はありますか?

質感が画用紙に近い「アラベール」や「グラフィーCoC」という白い紙がよく出ます 。リソグラフのインク色は「蛍光ピンク」が人気ですね 。リソグラフはインクを混ぜずに単色で刷るので発色が良く、それが「リソっぽさ」として皆さんに認知されているのかなと思います 。インクはオーダーカラーも含めて25色以上揃えています 。

データの作り方より先に「何がしたいか」を問う

―― リソグラフはデータのつくり方が特殊ですよね。案内するのも大変そうです。

印刷すること自体は簡単ですが、その説明はとっても難しいです 。初めての方向けに「刷ってみようリソグラフ」というワークショップをしていますが、やり方が一通りではないんです 。


―― その方がデザインソフトを使えるかどうかでも変わってきますよね。

リソグラフ印刷は「カラーデータをグレースケールに直す」というデータ制作の知識が前提になりますが、そこであきらめてしまう人もいます 。だからワークショップでは「普段どんな作業環境か(Wordか、手描きかなど)」「何をゴールにするか」をまずヒアリングして、その人に合わせたルートを案内するようにしています 。

―― 大変だけど、ありがたいサービスです。製本などの機材についても教えてください。

事務用の断裁機や骨べら、リング製本機など、個人で揃えるには少し手間な「あったら便利な道具」を一通り揃えて貸し出しています 。中綴じ以外にも、折ったら本になる方法や平綴じなどの形式も提案しています 。

自分に都合がいい、が一番。想さんのZINE制作術

―― 想さんご自身も面白いZINEをつくられていますよね。『人は懐かしさからのみ喜びを得る。』は短冊状だったり、最近「ZINEの商店街」で買わせてもらった『くたばってはるわ』は事務用のファイルでつくられたり。

ありがとうございます。私は年齢でいうと29歳なのですが、ルーツにテキストサイト全盛期の匂いというか、インターネット文化への憧れがあります 。「オモコロ」や「デイリーポータルZ」のような記事をずっと読んでクスクス笑っていたので、その「画面で読むときの温度感」をそのまま紙媒体に持っていきたいという狙いがあります 。

―― 横書きの文章がいい。セルフツッコミの括弧()が多い文章もネット特有の文体を感じます。

括弧がないとおもんない文章になっちゃうんです(笑) 。あと、形式については「自分に都合がいいように」つくっています。

―― 都合がいい。

ZINEで一般的な「中綴じ」は、ページ順を一つでも間違えるとてんやわんやの大騒ぎになってしまいます 。でも、私が使っている「ペーパーファスナーで綴じるファイリング形式」なら、片面印刷にしていることもあって、後からページの抜き差しやリカバーができるんです 。

―― 作業効率と表現の両立ですね。

はい。「ファイル」は記録するための物なので、自分の記録をZINEにするというテーマにも合っています 。『くたばってはるわ』という作品は、表紙のタイトルをテプラ(簡易プリンター)で貼ったり、中身は膀胱炎の話から始まって最後は下痢で終わるという哀愁漂う内容になっています(笑) 。文章は先に書いていたものの、形にする制作期間は実質半日でした 。

―― はやい。カニのイラストがいいですね。

カニはシルクスクリーンで刷りました。単純にカニのビジュアルが好きなんです 。公言していると、「あんた好きやろ」って各地のキーホルダーが集まってくるようになりました 。

 

「軽率に」ものづくりを。想さんが描くこれから

―― gamoyon Art laboについては、最近はどんな利用者が増えてきましたか?

ここ1年くらいでZINEを作る個人の方が本当に増えました 。「がもよん」エリアには「古民家再生プロジェクト」の影響で個人経営のお店が多いので、自分たちのスタッフTシャツをシルクスクリーンで刷ったり、周年記念の巾着に名入れをしたりといった利用も意外と多いです 。

―― 初心者の方へのサポートで心がけていることはありますか?

ZINEイベントに出展される作品はどんどんレベルが高くなってクオリティが高いものが増えてきているので、自分とのギャップに気後れしてしまう人がいます 。でも、そこをいかにくじけずに「楽しく」作ってもらうかを大事にしています 。以前、ワークショップを経て半年かけて16ページの中綴じ冊子を作り上げたお客様がいました。それはご自身の結婚式用だったのですが、最後に見せてもらったときは泣きそうになりました 。

―― それは嬉しいですね。最後に、今後の展望を教えてください。

gamoyon Art laboを「大阪の人みんなが知っている」くらいのお店にしたいです 。あとは今、紙は毎日どんどん廃番になっていて、種類が減っています 。だからこそ「こんなおもろい紙があるんだよ、物で残しません?」と伝えていきたい 。紙を知る人、使う人が増えて良い紙も残っていってほしいです。

―― 「物で残す」ことの価値ですね。

創作を遠ざけなくていいと思うんです。毎日つくるご飯だって立派な創作 。もっと「軽率に」、軽い気持ちでみんなが何かをつくる手助けができたら嬉しいです 。

gamoyon Art labo
〒536-0004 大阪市城東区今福西4丁目1-2
Osaka Metro 長堀鶴見緑地線・今里筋線
蒲生四丁目駅5番出口から徒歩3分

https://gamolabo.com/

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DIY BOOKS店主(編集者・ライター)
平田提

DIY BOOKS店主、編集者・文筆家。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセ等を経て2021年に株式会社TOGLを設立。2023年10月より尼崎市・武庫元町で「つくれる本屋」DIY BOOKSを開店。今まで5,000冊ほどリソグラフで刷って手製本してきました。ZINEを2013年ぐらいからつくっています。