
こんにちは。DIY ZINEスクール1期生のシキタリエさん(編集)と川瀬亘さん(デザイン)によるZINE、『シッパイイッパイ』の販売会が2025年2月24(月・祝)に行われます。当日はZINEスクール4期が2階で開催中で僕はそちらにおりますが、終わったあとにお顔を出す予定です。
このZINEに僕も寄稿させてもらっているんですが、良いZINEです。いろんな人のシッパイが集まってて、ほっこりする。シッパイしますね。にんげんだもの。
装丁もよくて、表紙は白黒で印刷されているところに蛍光ペンで塗っているんです。当日もしかしたらそういうワークショップもあるかも。
許可をいただいたので、僕が寄稿した文をこちらにアップしておきます。参考までに! 祝日ですので、予定が合えばぜひお越しください。普通に開店していますので、もちろんそれ以外のZINEや書籍もお買い上げいただけます。
「ふたりのサンタ」
今も思い出す、小学校のころに経験した失敗が「ふたりのサンタ」事件である。当時、恐らく秋田県秋田市の小学校に通っていた三年か四年のころ、年に一回あるクラス発表会で劇をやることになった。僕が劇をやりたくて手を挙げたら、同じ班のみんなは特に意見がなくて劇に決まった⋯⋯ぐらいの空気感であった。それもあって、僕が脚本を担当することになった。
ともあれ、年末の発表会に向けて準備は着々と進む、僕らの班以外は。あれだけ劇がやりたかったのに、僕は脚本を書けずにいた。演目を事前に先生に届けなくてはいけなかったので「ふたりのサンタ」というタイトルだけ先に送っておいた。
当日。三十分前になっても脚本は一行もできていない。僕以外のメンバーも焦って、僕にせっつく。でも顔面蒼白の僕からは何も出てこない。とりあえずサンタの格好をした僕を含めた二人と、トナカイ数人が、段ボールでつくったソリだけが置かれた舞台(教壇)に上がっていく。さあなぜ「ふたりのサンタ」なんだ。時間軸の違う二人が出会う? どちらかがニセモノってことにする? そのぐらいの話は誰かと直前まで話していた。コント師でもない、ただの小学生にこんなしんどい場を乗り切れるだろうか?
「さあつぎは三班の発表です!」と先生に呼ばれて出ていくも⋯⋯即興劇はできるわけがない。「ごめんなさい、間に合いませんでした」と言って、場が白けて終わったのを覚えている。メンバーにも先生にも、あとで怒られた。申し訳ない気持ちと悔しさでいっぱいだった。
僕はそれで学ばず、高校に入ってから「映画研究会」を立ち上げて文化祭で映画を出そうとしたけど、結局当日まで撮らなかった。大学の映画サークルでも脚本が二年書けなかった。向いていないことをしようとしてきた人生だった。今でもそういうところはあるけれど。
「ふたりのサンタ」の経験からそうなったのかは分からないが、今の僕は「沈黙をどうにかする」スキルは持ち得ていると思う。編集者・ライターとして色んな人にインタビューをしたりトークイベントをしたりするようになって、アドリブ力がついた。その場で面白い話を引き出すことに歓びを覚える。そうしないと生きてこられなかったからでもあるが、同じような場を何とかするようにして力に気がついたのかもしれない。
会社の事業も無計画で良くないのだが、台本がないほうが僕には向いてるんだなとしみじみ思う。