6月からDIY BOOKSで始まる、うるし継ぎレッスン。漆の魅力を、講師の佐藤由輝さんに聞いてみました。講座は6~9月、約2週間ごとに計8回と時間がかかりますが、その時間は漆(うるし)の特性を引き出すために必要なもの。ゆっくりと器や、何かを直す時間と向き合ってみる機会になれば、と考えています。
聞き手:平田提(DIY BOOKS)
講師プロフィール:佐藤由輝
1994年大阪生まれ。2019年京都市立芸術大学美術研究科工芸専攻漆工修了。漆の性質や質感を探求し、誰かとものづくりをしながら作家として活動中。漆や工芸に宿る人々の生活の知恵や工夫の痕跡を知り、それが今の暮らしのひと工夫に繋がる方法を探している。
漆との出合いと魅力
(佐藤さんが直したという、お皿。欠けた部分を黒の漆で)
――漆との出合いはどんなものだったんでしょうか。
漆とは大学の授業で出合ったんです。大学の工芸科では、1年生で「染織・陶磁器・漆工」3つの分野を学び、2年生から専攻を決める必要がありました。私はもともとものづくり全般に興味があったのですが、その中でも漆という存在が一番「未知だな」と思って漆を選びました。漆をもっと深く知りたいと思ったんです。
――うるしの魅力はどんなところにあると思いますか?
ウルシノキから取れる漆は、日本・中国・韓国・韓国東南アジアの地域でいえば原始時代から使われてきた「塗料の原点」です。古くから器やお箸だけでなく、建具にも使われてきました。
漆の魅力は何かを覆うと漆の強い存在感を放つ一方で、何かがないと漆の塗膜を張ることは難しいところ。つまり一緒に存在するものが何か必要となる、形をもたない素材であるところです。生きている素材ですし、ずっと触っていても「未知」はなくならない。答えが見つからないからこそ探究したいと思えますし、寄り添っていける感じがあります。
時間をゆっくりかけるうるし継ぎ
(佐藤さんが漆で注ぎ口を直したガラスのティーポット)
――佐藤さんは暮らしの中でうるし継ぎをされているんですか?
もちろん継いでいるんですが、私があまり器を割らないんですよね(笑)。今は依頼をお受けして直すことが多いです。食器や、お箸の塗り直しもやっています。
――今回のDIY BOOKSでの講座は9月まで全8回、約2週間ごとの開催です。佐藤さん はゆっくり時間をかけることを重視されていると聞きましたが、漆は時間のかかるものなんでしょうか。
個人的には「無理をしない」のを大事にしています。うるし継ぎについて言えば「漆に合わせる」ということでしょうか。やろうと思えば、人の力を加えたりすれば早く終えられないことはありません。ただ先人の人が積み上げてきた技術も尊重したいですし、漆本来の接着力の強さを活かせず、硬化する時間を持てなくなってしまいます。逆に時間をかけてあげられれば、漆の力を引き出してより強固に器を直すことができる。
漆の時間に合わせることで「急がなくていいか」と思えるのは、うるし継ぎの一つの魅力だと思います。
(佐藤さんがお客様から依頼を受けて漆で継いだお皿)
家でできるうるし継ぎ
――小さなお茶碗の欠けぐらいだったらある程度すぐに終わるものでしょうか。
1、2ミリの小さい欠けだったら講座の4、5回分(2週間おきに1回の開催)で終えられると思います。
うるし継ぎ講座をしていると、講座中にまた割れたお皿が見つかって持ってこられたりすることもあります。講座内でできる量は限られているので、その場合はぜひおうちに漆や道具を持ち帰ってやってみていただくのをおすすめします。もちろん手などがかぶれる心配があるので、手袋をするなど注意は必要です。
講座が終わるころには、みなさんゆっくりした時間に慣れて「完成してもすぐに使わずに、1カ月置いてから使ってください!」とお願いしてもすんなり受け入れてくださるんです。安心して使っていただくためにもぜひ終わったら飾って眺めてほしいですね。
ゆっくり器や、モノを直す時間に向き合えるうるし継ぎ。お家でも試せるようになったらいいですよね。ぜひこの機会に受けてみてはいかがでしょうか。
うるし継ぎレッスン概要
会場:DIY BOOKS(兵庫県尼崎市武庫元町1-27-5)
日程:全8回
2024年6月6日(木)~9月26日(木)の隔週木曜日
対象:すべてのレッスンに参加可能な方
定員:6名×2クラス
同日に別時間帯で2クラスあります。いずれかの時間帯をお選びください。
①12:30~14:00
②14:30~16:00
参加費:28,000円(材料費含む)
持ち物:以下の持ち物を持参ください。
割れや欠けのあるある陶磁器2、3点(ガラス不可)
- 保管用段ボール箱(D40×W30×H20ほど)
- ハサミ
- カッター
- 古布
- 割り箸(複数本)
- エプロン、腕カバーなど
※当日は汚れてもいい服装でお越しください。
注意事項
※本漆を使用するため、手などがかぶれる可能性があります。かぶれにくいよう講座の中でも注意換気を改めていたしますが、あらかじめご了承ください。
※修繕後の陶磁器は、直火・電子レンジでの使用はできません。
【お申し込みはこちらから】