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Home / Archives for diybooks_tenshu

diybooks_tenshu

うるし継ぎレッスンが始まります。6~9月時間をかけて器を直す

2024年5月20日

うるし継ぎレッスン

DIY BOOKSで「うるし継ぎレッスン」がはじまります。

「金継ぎ」は最近、海外でも「KINTSUGI」として知られていますよね。欠けた器を直して使い続ける考え方込みで、じわじわと興味を持つ方が増えていることを実感します(金継ぎ関連書籍も多くなってきました)。

僕は知らなかったのですが、金継ぎの「金」って最後の仕上げに使われるものだったんですね。

多くの場合はエポキシ樹脂、パテなどでつないでいく。金を使用しない場合でも「金継ぎ」と呼ばれる。

ただ今回は、プラスチック樹脂ではなく、自然由来のうるしを使用した「うるし継ぎ」です。仕上げには金を使用しません。

講師は、DIY BOOKSにたまたま来ていただいた佐藤由輝さん。うるし作家と知り、ワークショップをお願いしたいとお話していたのが実現しました。

このレッスンは6~9月まで全6回で欠けたり割れたりした器をゆっくりとうるしで直していきます。

ゆっくり時間をかけてモノを直していく楽しみをぜひ味わってみてください。

概要

会場:DIY BOOKS(兵庫県尼崎市武庫元町1-27-5)

日程:全8回

2024年6月6日(木)~9月26日(木)の隔週木曜日 

対象:すべてのレッスンに参加可能な方

定員:6名×2クラス

同日に別時間帯で2クラスあります。いずれかの時間帯をお選びください。

①12:30~14:00

②14:30~16:00

参加費:28,000円(材料費含む)

持ち物:以下の持ち物を持参ください。

  • 割れや欠けのあるある陶磁器2、3点(ガラス不可)
  • 保管用段ボール箱(D40×W30×H20ほど)
  • ハサミ
  • カッター
  • 古布
  • 割り箸(複数本)
  • エプロン、腕カバーなど

※当日は汚れてもいい服装でお越しください。

注意事項

※本漆を使用するため、手などがかぶれる可能性があります。かぶれにくいよう講座の中でも注意換気を改めていたしますが、あらかじめご了承ください。

※修繕後の陶磁器は、直火・電子レンジでの使用はできません。

【お申し込みはこちらから】

うるし継ぎレッスンに申し込む

カテゴリワークショップ 関連タグ:うるし継ぎ, ワークショップ

トークイベント「これからのまちの本屋」@小林書店参加しました

2024年5月19日

兵庫県尼崎市立花で70年以上続いた新刊書店、「小林書店」が今月、2024年5月末で閉店されます。

そんな小林書店で店主・小林由美子さんが3名の町の本屋の店主を呼んで語り合うトークイベント「これからのまちの本屋」に2024年5月18日(土)に開催、DIY BOOKS店主・平田も登壇者として参加しました。

トークの模様はこちら(Zoomのアーカイブ配信)

●登壇者
・小林 由美子(小林書店) 
・河田 秀人(ブックランドフレンズ)
・鳥平 純子(いろどり書房)
・平田 提(DIY BOOKS)

当日はオフライン/オンラインともに40名弱の方に参加いただきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。

小林さんが今まで町の本屋を続けてきて苦労されたこと、河田さんや鳥平さんが本屋さんをはじめた経緯などを伺いました。

イベント中にもお話しましたが、やはりDIY BOOKSは本を売るというよりつくるほうの意味での本屋だな、と改めて思いました。イベント終了後、参加者の方に「それって江戸時代に瓦版を売り歩いた『読売』ですよね」といわれたのが印象的でした。そうかもしれません(そうでないかもしれません)。

ただ個人的に、書くことと読むことは切り離せないと思っているので、いつも開いていない本屋にはなってしまったのですが、じわじわと活動を続けていきたいと思いました。小林由美子さんがおっしゃるように「本屋は何やったっていい」という言葉のとおり、なんでもやってみようと思います。

小林さん、河田さん、鳥平さん、司会の若狭さん、イベント運営のみなさま、お客さまみなさんありがとうございました。

文集「町の本屋」をつくりました

4月1日に小林書店閉店の報せを聞き「私たちで何かできないか」と小林書店で本の配達のお手伝いもされていた、若狭健作さんと話しあった結果、文集をつくることになりました。

小林書店だけでなく、町の本屋さんであったできごと、本との思い出を綴る。

小林書店にゆかりのある方だけでなく、DIY BOOKSのお客さん、お仕事で知り合ったみなさんにお声がけしたところ12名の方に文を寄せていただきました。

そこから編集し、DIY BOOKSのリソグラフで印刷。若狭さんや文を寄せていただいたシキタリエさんとおしゃべりしながら丁合・製本・裁断し、完成しました。

表紙の紙は赤色のレトロ感を出したく、ファーストヴィンテージを選びました。

表紙に傘のイラストがあるのは、小林書店が本だけでなく傘も売ってきたお店だからです。

最近の、DIY BOOKSも含めた独立系書店が行っている「店主が売りたい本を選書する」「本以外の商品も売る」「イベントで集客する」といった取り組みは小林書店が数十年前から行われてきました。

小林書店は「町の本屋さん」であると同時に、今の本屋さんのようにけっこう「攻めた本屋さん」でもあった。それは生き残るため、お店を続けるためでもありましたが、店主の小林由美子さん、夫の昌弘さんの人柄と信用で人が集まり続ける場所でもあり続けました。

このZINEで小林書店以外のお店も含む「町の本屋さん」をテーマにしたのは、小林書店が町の本屋の象徴のように思えたからです。そして小林さんは、お店を閉めることをネガティブにはとらえていない。むしろ最終日は紅白の布をたらして、「よくやった!」と門出を祝いたいと言う。

それはその後の町の本屋への、エールになるだろうとも思うのです。

文集には小学生から70代の方まで文を寄せてくれましたが、小林由美子さんにも寄稿いただきました。

小林書店だけでなく、町の本屋の良さや本との個人的で普遍的な体験を語る一冊になっています。

ぜひお手にとってみてください。

【仕様】

A5/36p(表紙込み)/表紙2C/本文1C

【執筆陣】※掲載順

若狭 健作

高寺 芳和

平田 提

のぼりぐち みちこ

シキタ リエ

志木田 明璃

クスモト トモコ

デイリーマザキ

白川 烈

桂 弥太郎

宇久 理恵

小林 由美子

文集「町の本屋」を購入する

カテゴリイベント 関連タグ:イベント, トーク, 動画, 小林書店, 町の本屋

海猫沢めろんの小説の書き方。カタパルト式に感情線を上げていけ

2024年5月9日

※以前、個人のnote・「Neverending School」に掲載していた記事を再掲しています。

小説家の海猫沢めろんさんに、初めてお会いした日に小説の創作法についてお話を聞いた。めろんさんは『左巻キ式ラストリゾート』でデビューし、『夏の方舟』『キッズファイヤー・ドットコム』などの小説、『明日、機械がヒトになる』ほかルポ・エッセイでも活躍中。コツは感情を下げず、上げていくことだとめろんさんはいいます。

小説は「カタパルト式」に感情を上げるよう書く

――30歳のとき初めて小説を書いたんです。めろんさんのnoteにあった「小説家が読んでいる小説を書くための本」も参考にしたんですけど……まあ、書けないんですね。一応完成させたけど……しんどかったんです。

海猫沢めろんさん(以降:めろん) どこらへんに悩んだんですか?

――まずプロット(話の筋)が先なのか、書き始めるのが先なのかに悩んで……。結局プロットを書いたけど、違う方向に途中から行ってしまった。全体の3分の2ぐらいで行き詰まって、書き直しました。

めろん:やり直して、もともと書きたかったことはブレましたか?

――そこはブレてないと思います。

めろん:書きたい場面は書けましたか?

――ストックしていたシーンがあったけど、どこにどう入れればいいかに悩みました……。

めろん:でもそこまでやれていたら非常に良いと思います。ペン貸してもらっていいですか?

最小限考えるべきなのはこういうことです(めろんさんが図を描いてくれる)。

三幕構成

――シド・フィールド的な三幕構成ですね。

※シド・フィールド……アメリカの脚本家、プロデューサー。著書『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』は、ストーリーテリングの教科書として有名。

※三幕構成……シド・フィールド理論にも登場する、脚本・ストーリーの構成方法。ストーリーを

1.設定

2.葛藤(対立)

3.解決

の三幕に分けて考える。1→2幕の切り替わりになる事件をプロットポイント1(PP1)、物語の折返しで最も盛り上がるクライマックスをミッド・ポイント(MP)、2→3幕の切り替わりでエンディングに向かうポイントをプロットポイント2(PP2)とする。

めろん:そうです。最初のセットアップ、PP1、MP、PP2、エンド、で5つあるんで5ACTって言われてるのかな? ここにさらに感情線を入れるんです。ただの三幕構成だとそこがないので。

三幕構成・感情線

めろん:スタート時点に大きな事件を入れてドンッと感情を上げる。で、ミッドポイントまで行き、また最後に事件が起きて終わりへ向かう。三幕構成で組めるのはこういう出来事の盛り上がりですね。これは書き手のプロットラインだから「上がって落ちる」があってもいいけど、読者の感情は、常に上がっていかないといけない。

でも、これはあくまで基本なんですよ。僕も最初は三幕構成をベースに小説を書いてたけど間違ってたことに気づいた。ポイントを先に決めると、そこへのつなぎのシーンを書くのが苦痛になったんです。そうじゃなかったですか?

――そうでした! まさに……。

めろん:だからこのやり方は間違いだって分かったんですよ。僕なりの改良理論があって、それは事件のポイントじゃなくて、シークエンスで考えるんですよ。

カタパルト理論

めろん:この塊が1章なんです。大事なのはこの章の頭と最後なんですよ。最初に事件が起きる。次にさらに事件が複雑になる。主人公がピンチになる。そこで選択する。選択→結果→選択→結果……の繰り返しです。

それだけ考えるとつながるんですよ、話が。

――これは分かりやすいですね。

めろん:三幕構成の「点」だけで考える方法の何が問題かというと、その点で一度終わっちゃうことなんですよ。

そうじゃなくて、加速していく通過ポイントだと捉える。終わらせちゃいけない、どの章も。

1章で少年と少女が出会うとしたら、そこで終わりにしちゃだめなんです。少年と少女が出会いそうってところで終わりにするとか。出会った後に何かが起こって終わりにするとか。

ベクトル、運動量を切っちゃだめなんです。

――ゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズでソニックがカタパルトを通ると加速しますけど、そんな感じですね。

めろん:そうです。一段落させちゃ絶対だめ。収まりよく終わったら、無理やり崩してください。

で、前の章の最後と次の章の最初が重なるようにする。

――なるほど、最後のオチが次の始まりになるんですね。

めろん:これさえ分かっていればあとは推進力でいくので、ポイントは考えなくていい。ぜひこれでやってみてください。

小説は感情の推進力が大事

――めろんさんの作品でいうと、三幕構成、「カタパルト式」で書いたのってそれぞれ何の作品ですか?

めろん:デビュー作の『左巻キ式ラストリゾート』は何も考えずに書いたんですが、今考えるとカタパルト式になってましたね。

『零式』は三幕構成と5ACTで書きました。ポイントだけ考えて書き始めると、感情線や大局が見えなくなるので、最初から上がって下がる話にしようと思いました。それで飛行機が飛ぶと感情が上がり、落ちると感情も下がるようにしました。

『ニコニコ時給800円』も三幕構成と5ACTでやったかな。

この理論って長編も短編も同じになるんで、短編なのに長編つくるくらいの労力がかかって……なんでこんな簡単なことに時間がかかるんだ……ってなりました。ちなみに長編だとここにサブプロットが2、3本必要ですね。

でも純文学の場合はこういう理論とは別の体系もあるんで、自分の作品だと混ざったりしてます。

――『愛についての感じ』とかは使ってないんですね。

めろん:そうですね。「オフェーリアの裏庭」は当時の『群像』の編集長が好きだと言ってくれたんですが、あれは理論をまったく使ってないです。短編の「ワールズエンド×ブックエンド」(『本をめぐる物語 小説よ、永遠に』角川文庫所収)はカタパルト方式でやっていて、完璧にうまくいきました。

めろん:物語全体の始まり、中間、終わりは考えたほうがいいですけど、シーンだけまず思いついたら、それを膨らませていけばいい。

最初に大事件を起こすべし

――ひとつひとつの章の中も三幕構成とか構造を意識する必要はないんですかね? それをやると大変そうで……。

めろん:なってなくて大丈夫です。最初と終わり、ツカミ・ヒキだけ考えれば。注意したほうがいいのは、なるべく早く事件を起こすこと。小説初心者が中盤に持ってこようとしている事件が、たぶん最初になきゃいけないやつです。

――重大な事件が最初に来なくちゃいけない。

めろん:初心者は、書きたいものが分からないまま自己確認のために書き始めることが多い。世界観、キャラクターの性格だったり。それが確認できて初めて事件がようやく起きる。でもそれじゃ遅い。大事件が先頭にこないと。

――お客さんに見せるもんじゃないと言えば、そうなのかもしれないですね。

めろん:骨組みの段階、ラフっていうかそういうものでしょうからね。ラノベなんかはそこがすごくうまくて、最小限でやっている作品が多い。

物語がなりたがってる形があるなら、逆らわないほうがいい

めろん:でも創作理論はないほうがいいんです。固まっちゃうから。最初のガイドとしてはいいけど、会得したら使わないでいい。

――染み込んで自由に書けるほうがいい。

めろん:身体化しないと無意識の部分が出てこないんですよ。全部計算されてるものってつまんないんですよね。

――やはり推進力が大事なんですね。めろんさんは骨組みをきちんとつくる理性・論理的な面があって、一方で感覚・激しい感情もあるんじゃないかと思います。それはどう制御してるんですか?

めろん:制御してないですね。

――静かに怒るスーパーサイヤ人的な……。

めろん:常に逆のことが気になるんですよ。何でも対偶で考えちゃう。右翼の本読んだら左翼の本読みたくなる。自然にバランスとりたくなる。理屈を勉強したら、次は無意識だ、と。だから理論に行ったら自然と感覚に戻ろうします。

――カタパルト式で書いたときに、「あ、これ脱線してるな」「考えてたのと違ってるな」とは思うことはないんですか? 書き始める前の目論見みたいなものがあったとして。

めろん:ものによりますけど、動き始めてから方向が定まってくることってあるじゃないですか。それを遮らないほうがいいです。物語がなりたいと思っている形があるなら、それを生かしてあげたほうがいい。こう打ったらこういくしかない流れってある。

ただそれも2種類あって、よくあるパターンになる場合とそうじゃない場合。パターンの場合は崩したほうがいい。読者が想像できるようになっちゃうと面白くないんで。

曲げちゃいけないのはキャラクターの気持ち

めろん:最初のガチガチの三幕構成理論で書いたときに忘れたのは、キャラクターの気持ち、感情。一番曲げちゃいけないのは気持ちなんですよ。

「こういうふうに進めたい」ってストーリーがあっても、例えば今僕らが牛丼食べてたとして、急に裸で踊ったりはしない。感情ってそんなに曲げられないんですよ。みんなが自然に思って納得する感情のパターンってそう多くはないから。そこを軸にしないとめちゃくちゃずれちゃう。読んだ人が同じ感情になってないと心が働かないんですよ。そこまでコントロールできてるか、ですね。

単純な話、みんなを悲しい気持ちにさせようと思ったら、「感情移入させてから殺す」これでしょうね。

――泣きゲーの定番ですね……。

めろん:あるいは最初から死ぬ運命の設定にしておくとか。工夫は必要です。どういう話か分からないことに読者はイライラする。「どうなるの」って知りたいフックがあるから読む。「それどうなるの?」の部分を書くのが小説家なんですよ。最初に「それどうなるの?」って思われないのはだめなんですよ。

だから、理屈でやることからはもう抜けて、感情で何とかしちゃってください。

さっき上げた短編『ワールズエンド×ブックエンド』は、感情が理屈を超えてます。最後の終わり方は意味分かんないんですよ。でもエモい感じはある。「意味分かんないけどエモいっ!」てなる。

「今までだったら理屈で書きそうだけど、この作品は感情を優先すべきだ」って判断して書けた作品ですね。

小説はワンチャンある

――そもそもめろんさんの小説を書く原動力って何なんですか?

めろん:「常に書かなきゃいけない」強迫観念みたいなのはありますけど、もともと読むのが好きだったから、書くようになるのが自然でした。書きたいから書く。

なぜかみんな小説書きたがるでしょう?

――そうですね(笑)。僕もなぜか昔から書きたかったです。

めろん:そういうものだと思います。「書きたい」幻想はみんなが持ってる。

――みんな書くのが目標になってたりしますよね。今は社畜だけどいつか小説家に……とか。それってなぜなんでしょう? 自己実現?

めろん:小説には夢があるんですよ。ワンチャンある(笑)。

――ワンチャン! ほんとそれですね。夢。

めろん:よく「小説家になりたい」はダメで、小説が書きたい人が小説家になってくださいって言う人がいます。でもそこは本当に分けられるのかなって思ってて。作家じゃないけど小説書いてる人もいるし。作家になりたくて書いた小説が良かったりもするし。作品と作家は関係ないとも言えますから。

出版社からすると「ワンチャンねーよ」「漫画のほうがワンチャンあるよ」かもしれない。ビジネスとしてのワンチャンじゃなくて、「夢」ですよね。人間のクズでも小説書いたらなんとかなるような。めったにないでしょう、他にこんなものは。

――村上龍さんの「小説家は最後の職業である」って言葉がありますね。

めろん:僕もそう思いますけど、ダメな人だけじゃなくて、リア充ほど書いて欲しいってところもあります(笑)。

ラグジュアリーかつバブリーな小説が求められているかもしれない。だから、いろんな職業の人が小説を書くべきなんですよ。

――めろんさんはいつ頃から小説家になりたかったんですか?

めろん:高校のときには既になりたかったですね。全寮制の高校で自由があまりなかったんですけど、ライトノベルを読んでいたときに「これならワンチャンある」って思って。

――ずっとその思いは持ち続けてたんですか?

めろん:なろうと思っただけで、ちゃんと書いてはなかったんです。本気で小説家になろうと思ったのは27才ぐらい。そのときは小説の冒頭ばっかり書いてました。冒頭だけで終わるファイルがいくつもありました。

――完成させるのがまず一歩と聞くことも多いですが、そこから前に踏み出せたのは何がきっかけだったんですか?

めろん:人って、状況が迫ってこないとやらないんですよ。締切もそう。自分の意志では無理です。

――とすると、書かざるをえない状況になった?

めろん:20代の頃に大塚ギチさんというライターに出会ったんですよ。そのとき、小説が書きたいというぼくに、「俺、おまえみたいなやつが一番嫌いなんだよ。いままで何十人も作家になりたいってやつと会ったけど、誰も小説書きやしねえ。どうせおまえも同じように、完成しない原稿抱えて『本当は作家になりたいんですよー』とか言い続ける、みっともない大人になるんだよ。さっさとやめちまえ」ってキレながら言われたんですよ。

ぼくはその言葉を否定するため、半年かけて初めて500枚くらいの長編小説を書き上げました。もちろん初めて書いた作品がまともなわけがなく、返ってきたのは、「おう……書いたな」だったんですけど。

その2年後くらいにゲームをノベライズするってなって、それも追い込まれてました。期限が決まったから書けたんです。何個かゲームの企画出さなきゃいけなくて数個出したうちの1つを作ることになって。そのときは経験なかったし18禁だけどゲームをつくってみたかった。恋愛アドベンチャーじゃなくてトランプの「大富豪」のシステムで。

――それが『左巻キ式ラストリゾート』ですね。

めろん:契約書にノベライズの項目があって、権利を自分にしておいたんです。だから書けたんですよ。そういうチャンスを掴むべきだと思います。チャンスはどこにでもある。

――たしかに。僕も「断られるかな……でもお願いしてみよう」って取材申し込んでみると意外といけて、そこから他の企画も転がり出すことがあります。

めろん:やる・やらないの違いです。なんでもやる。準備して待っても来ない。そのときあるものをやるしかない。「なんとか賞を獲って」とか考えなくても、デビューしたあとでも文学賞には応募できますから。今やれることをやりましょう。

カテゴリ書き方 関連タグ:小説, 文章論, 書き方, 海猫沢めろん

弁当と随筆。身を立てる目的以外にも、書く意味はある

2024年5月9日

お小遣いをやりくりするために(そして健康のために)弁当を最近作っている。たいていは昨日の残りものにソーセージや卵料理を足すぐらいだ。ふと思ったのは、「随筆も弁当のようなものではないか」ということだ。あるいは俳句もそうかもしれない。商売ではない弁当というものは基本的に自分や家族、身近な人のために作る。InstagramやX(旧Twitter)に上げようときれいに作る人もおられるが、そうでもなければそこそこの見た目で作る。自分だけのための弁当だったら、本来は人に見せるためではないから、見ばえをそこまで気にする必要はないはずだ。人に見せることを意識しすぎるとつらくなる。続かなくなる。

『パターソン』的な在り方

大好きな映画『パターソン』では、主人公のバスドライバー・パターソン(アダム・ドライバー)が、毎日手帳に詩をしたためるさまが描かれる。妻は「出版してほしい」と言うが、パターソンは乗り気ではない。バスの出発前に詩を書き、公園の滝を眺めながら妻の作ってくれた弁当を食べるのが好きなだけなのだ。

日記や随筆や俳句にしても、もちろん誰かに届けるために書かれるものは価値のあるものがあろうが、SNSやブログに上げるために書くことが苦しくなるぐらいだったら、自前の弁当を作るように書くぐらいが、少なくとも僕にはちょうどいい。

科学と俳諧の人・寺田寅彦

僕が一番好きな書き手はおそらく、寺田寅彦である。寺田寅彦は東京大学や理化学研究所に所属した物理学者だ。関東大震災後の「震災は忘れたころにやってくる」というのが寺田の発言ともされているが、確かではない。寅彦はX線についてなどのほかに、ヒビの割れ方や金平糖の突起の作られ方の研究もした。

夏目漱石の門下生でもあるが、ほとんど漱石は対等につきあっていたといわれる。寅彦は俳句もたしなむし、『団栗』『電車と風呂』など写生文・随筆も一級品である。日常で感じる不思議や「あはれ」を句や文にするのと、科学的な研究をするのは不可分なものというか、同じところから出発しているのだろう。

寅彦にしても、パターソンにしても、書くことが本業ではない。それで身を立てようとは思っていない。ただ書き続けている。それは弁当を作るようでもある。誰かに見せるためではなく、ただ食べるために。そして自分にしか分からない彩りを感じるために。

それが大事だ。生活の中に書く時間があること。自分の心の動きを書きとめること。

雑談のような文章の在り方を

今の時代ほどみんなが書く時代もないだろう。SNSにブログに、チャットにメールに。AIが手伝ってもくれるけれど、恐ろしいほど目的に支配されている。コンバージョンをとるために、上司の承諾を得るために。そういう文が多い。

コロナ禍を経て、多くの人が気がついたのは雑談の重要性だろう。僕は独立してからずっとリモートで働いてきて心身を病んだ。隣にたわいもない話ができる同僚がいる、というのはいいものである。組織で働くのはいやなんだけど……。

それと同じで、目的ばかりの文章を書くというのも疲れるのである。僕はテキストコミュニケーションに疲れてつくづく書くのが嫌になった時期がある。文字がいやになり、声がいい、とも思った。

でもパターソンや寅彦を知り、文を書くにしてももっと穏やかな在り方があると分かった。

別に文章で食おうとか、この文章ですごいと思ってもらおうなんてそんなことはしなくてもいい。ただ自分にしか、自分の興味や言動でつくられる「系」にしか放てない輝きがある。それは書かれるべきだ。いきなり清書でなくてかまわない。自分にしか読み取れない文字で手帳に書き留めておく。それをいつかまとめて書く。それが結果的に人に見せられそうになったら、発表したらいい。

そういう、書く時間と習慣が弁当づくりのようにあってほしいんである。弁当といっしょで、三日坊主になりがちではある。そうならないためには、冷凍食品や昨日の残りで弁当をつくるように、「こんなんでいい」レベルの文をたくさん書くことだと思う。そんな文でも、確実に心が動いたのなら、立派な足跡である。その足跡が他の人を動かすこともあるのである。

カテゴリ随筆 関連タグ:パターソン, 寺田寅彦, 弁当, 随筆

痕跡を愛おしく思うこと。そこに人の「系」を見ること

2024年5月9日

ある日の朝、息子とお店屋さんごっこをして遊んだ。毎朝、決まった時間に保育園に送りたいのに、行く寸前に遊びが盛り上がって時間が守れない。これも良い学びだ、仕方ないとこちらも遊ぶ。ミニカーに値札をつけて、僕がお客さんになって買い物をする。100円ずつ高くなる値札のつけ方は今日が初めてだ。アンパンマンのお届けセットについていたリモコンのようなものをバーコードスキャナー代わりにして息子がお会計をまとめてくれる。僕はミッキーマウスのポーチに入ったおもちゃの500円玉や1,000円札でお支払いをする。

息子を園に送り届けて帰ってくると、遊びの跡があった。散らばった値札に、きちんと並べられたミニカー。昔から人のこういう痕跡を愛おしい、と思ってきた。脱ぎ散らかした靴下。無残に積まれたメモの山。途中で放置された折り紙。この思いはどこから来るんだろうとも思うが、そもそも僕に限らず人は痕跡を愛おしく思うものなのではないかと思い直した。

大学の頃、長谷正人先生の授業で、著書『映像という神秘と快楽―“世界”と触れ合うためのレッスン』を読みながら「写真もフィルム・映画も、もともとは自然現象だ」という話に衝撃を受けた。その人・モノ、対象物に反射した光、電波がレンズを通り、現像される。長谷先生はこの現象を「キリストの聖骸衣」に例えていたが、そのようにそこには明らかに過去が写っている。鑑賞する者は自然現象を再体験する。「見る」というより「触れる」。いわば明らかに現在ではない、死を観ながら。

写真にしろ、文字の筆跡にしろ、切り絵にしろ、アナログなものにはそういう過去が映し出される。

ただ息子が残した痕跡は、明らかに現在も息づいている。これで思い出したのは、自分なりのドッペルゲンガー理論のこと。ドッペルゲンガーとは昔からある言い伝えで、世の中には自分そっくりの存在がいて、見たら死ぬというものだ。これを僕は逆にとらえて、ドッペルゲンガーとは「自分の死を見て自分を知る」ことなんじゃないかと考えた。自分探しをしても内側にはない。好きな食パン、靴下、映画、ゲーム、服、部屋……外的なモノの集まり、独自な「系」こそが自分である。もしドッペルゲンガーを見たとするなら、その系があまりに自分に似ていて、外に出された自分を見たということなのではないか。自分を見るなんて、幽体離脱でもしない限りできないんだから。

僕が息子の痕跡を愛おしく思ったのは、息子が愛おしかったからに違いない。そして、並んだミニカーや散らばったおもちゃのお金の、その偶然には作り得ない有り様に息子という人間を感じて(自分も遊んだことを思い出して)愛おしくなったんだと思う。

一人ひとり違う系にこそ価値があって、それを残すからこそ人間は人間なのだ、とつくづく最近は考えている。

カテゴリ随筆 関連タグ:子ども, 映画, 随筆

なぜ武庫之荘で「つくれる本屋」をはじめるのか?

2024年5月8日

こんにちは。つくれる本屋「DIY BOOKS」店主・平田提(ひらた・だい)です。DIY BOOKSは兵庫県尼崎市・武庫之荘(むこのそう)に2023年10月27日にオープンしました。

武庫之荘は阪急で梅田から10分と少し、西宮北口駅の1つ前です。各駅停車しか停まらない駅ですが、乗降車数は阪急神戸線でも上位で、活気がある町です。

武庫元町は駅から徒歩20分ほど離れていますが、昔から団地が近くにあったりして、商店街が続いています。良い個人商店や銭湯があります。

なぜ私がこの武庫之荘、武庫元町で書店をやることになったのか。しかも「つくれる本屋」などというのをやるのか……というのは『武庫之荘で暮らす』というZINEにほとんど書いたのでぜひお読みいただきたいのですが、改めてお話しさせていただきます。

なぜやるのか


リモートとデジタルに疲れた

私、平田提(ひらただい)はWeb編集者・ライターとして独立して5年ほど、法人化して3年ほど経ちます。主に企業様相手に、コンテンツマーケティングやSEO(検索エンジン最適化)、取材などのお仕事をさせていただいて来ました。

ただ独立以来、コロナ禍以前からリモートワークだった私はデジタル機器やスクリーンと、そして遠くの誰かと常に繋がる毎日にしんどさを感じていました(そして誰とも話さず終わることも)。さらに本が好きで文学も好きでこの道に来た(Webも好きだったのですが)はずなのに、チャットなどテキストコミュニケーションで感情をすり減らしてしまい、なんだかもうアナログな生活したい……などと思い始めるのでした。

あと、自分がつくるもので人の役に立てていない気持ちが強くありました。子どもと遊ぶ時間を削ってまで仕事しているのに、いったい自分は何の・誰のために仕事をしているのかと。



地域とより繋がりたくなった

そんな中で新型コロナウイルスの流行が始まり、リモートワークが世間的にも広まり、私も外出の機会がより減りました。一方で、最寄り駅の武庫之荘で過ごす時間が長くなりました。カフェの店員さんやカレー店の店主さん、畑のおじさんなど今まで深く話さなかった人たちとの時間が増えるようになって「この人たちと、町の人の役に立つ仕事がしたい」と思うようになりました。
町に役立つ仕事ができれば、家族が暮らしていく町をより良くするお手伝いもできるかもしれません。

触発に次ぐ触発


『Brooklyn Superhero Supply Co.』というブルックリンにあるお店みたいなのをずっとやりたい思いがありました。
ここでは、架空のスーパーヒーローのグッズみたいなのを売るかたわら、店の秘密の扉の先では子どもたちに文章を教えているのです。そして子どもたちの書いた作品を本にして売っている。

そんな中で尼崎・立花の小林書店さん、横浜・妙蓮寺の書店・生活綴方さん、王子公園の古本屋ワールドエンズ・ガーデンさん、須磨海浜公園の自由港書店さん、韓国・ソウルのTHANKS BOOKSさん……素敵な書店をめぐるうち、何だか気持ちは本屋をやる気になっていました。そして尼崎大学や尼崎・杭瀬中市場の古本屋「二号店」や伊丹のみつづみ書房さんの人たちに大きな影響を受けました。

確かに今は書店が稼げない、潰れる、出版不況だなんていわれまくっている時代です。そんな時代に本屋をやるのは無謀かもしれません。
一方で、多くの書店は副業をやりながらやられています。出版や執筆をしたり、全くべつのナリワイをしたり。
『ステイ・スモール』(うちの2階にあります)という本に影響を受けて、なるべく経営は小さくするべきという考え方になっていた私としては、なるべく無理をする必要はないだろうと思っていました。複数の収入口は持っておく。そしてやがて小さくしていく。

かつ、リソグラフをお客さんに使ってもらって『Brooklyn Superhero Supply Co.』や本屋・生活綴方さんのようなことをすることもできる。2階で(なるべく)アナログの作業や読書、ワークショップに使ってもらったりもできるし、知り合いのアーティストやイラストレーターたちと展示もできるかもしれない。

そういう妄想が膨らんでいって、いつの間にか武庫元町の長屋を契約して、大阪・吹田のえびす工務店さんと尼崎・塚口のゼロ工房さん、そして尼崎・戸ノ内のDIYの先人・ガサキベースさんとお店をつくることになったのでした。


やけに長くなってしまいましたが、そんな思いで始めた書店。

いまはイベントやワークショップのときのみ開店しておりますが、
ぜひお越しください。お待ちしております。

カテゴリお知らせ 関連タグ:お知らせ, 店のこと

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